日本小児がん研究グループ 血液腫瘍分科会(JPLSG)

SCT委員会

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【委員会のご紹介】
 
SCTとはstem cell transplantation (造血幹細胞移植)の略で、JPLSG-SCT委員会はJPLSGの臨床研究における造血幹細胞移植に関する活動を行っています。他の治療研究委員会が、一つの疾患に対して、診断から治療に至る一連の医療について活動している、つまり縦糸の役割をしているのに対し、SCT委員会は造血幹細胞移植を含むそれぞれの臨床研究を横断的に支援する役割を持つ、つまり横糸としての役割を担っています。

小児における造血幹細胞移植はわが国で1980年代から行われ、既に30年以上が経過していますが、この間に移植幹細胞の種類は骨髄から末梢血幹細胞、さらに臍帯血と拡大し、ドナーの種類もHLA一致同胞からHLA不一致血縁者、さらに非血縁と拡大しました。非血縁ドナーは骨髄バンクを介した非血縁骨髄移植、さい帯血バンクネットワークを介した非血縁臍帯血移植が行われていますが、近年非血縁ドナーからの末梢血幹細胞移植も行えるようになりました。

造血幹細胞移植は移植前処置、造血幹細胞輸注(移植)、移植片対宿主病(GVHD)予防、感染症予防、輸血療法を中心とする支持療法の3つの手技で成り立っています。これらの手技も新たな薬剤の登場や臨床研究の進歩とともに多様化し、患者さんの年齢、疾患、病期および移植時の状態、ドナーの種類によって選択されます。これらの適切な選択は必ずしも容易ではなく、GVHDの合併頻度に民族差が存在することが知られており、わが国に適した選択指針の確立が求められています。

SCT委員会では日本小児血液学会、日本骨髄バンク、日本さい帯血バンクネットワークを経て日本造血細胞移植学会データセンターに登録された臨床データを後方視的に解析し、現時点で様々な条件下で選択することが妥当であると考えられる治療手技を提示してきました。同時に、それぞれの治療委員会で立案する臨床研究において、造血幹細胞移植を治療アームに含む臨床研究には計画段階から立案を支援してきました。さらにこれらの臨床研究における造血幹細胞移植において、研究毎に治療計画が異なることがないように、「小児造血細胞移植臨床試験プロトコールマニュアル」を作成しました。治療計画立案の際に、このマニュアルから当該部分を引用することにより、造血細胞移植療法の標準化が可能で、治療成績における施設間較差が縮小することが期待されます。

また、造血細胞移植後には重篤な合併症が起こりやすく、ウイルス、真菌などの感染症や臓器障害を中心とした非感染性合併症などがあります。特に移植後早期の非感染性合併症には治療法が確立されていないものも多く、いったん重症化すると生命を脅かすことが少なくないため、治療法の確立が急務とされています。SCT 委員会では移植後早期合併症に対する調査研究や前向き観察研究を立案し、これらの合併症対策にも着手しています。


【業績】