日本小児がん研究グループ 血液腫瘍分科会(JPLSG)

免疫診断委員会

組織概要へ→
活動実績へ→

【委員会のご紹介】
 

小児造血器腫瘍の標準的治療法の確立にあたっては、精度の高い標準的な診断法により、正確な診断を得ることができて初めて効果的な治療法を選択することが可能となります。そのために、まず、免疫診断委員会では、初発時における治療法の選択に必要な免疫学的診断の標準化を目的として、「小児急性白血病の免疫学的診断に有用なマーカー解析パネル」を決めました。また、小児造血器腫瘍の免疫学的診断に関して、マーカー解析を実施している中央診断施設4施設と臨床検査会社3社を対象に、外部精度管理を実施しました。その結果、検査機器(フローサイトメーター)の施設間の差は僅かでした。各項減の発現プロフィールの比較検討では、抗原の発現量の多い場合には、施設間における検査結果の差はごく僅かでしたが、抗原の発現量の少ない場合には、検査結果に差異を認める場合がありました。検体の処理方法、あるいは抗体を反応させるタイミングが、検査結果に影響を与える場合が認められ、小児造血器腫瘍の免疫学的診断(マーカー解析)の標準化には、解析パネルの統一だけでなく、検査手技等の統一も必要と考えられました。

さらに、中央診断施設において診断された症例のマーカー解析データを用いて、小児造血器腫瘍の免疫学的診断基準を作成しました。B-precursor 急性リンパ性白血病(ALL)は「CD19、CD79a、CD20、CD22抗原のうち2つ以上が陽性、かつIgκとIgλが陰性」、Pre-B ALLは「CD19、CD79a、CD20、CD22抗原のうち2つ以上が陽性、細胞質内μ鎖(Cyt-μ)陽性、かつIgκとIgλが陰性」、成熟B細胞ALLは「CD19、CD79a、CD20、CD22抗原のうち2つ以上が陽性、かつIgκまたはIgλが陽性(μ鎖の発現は必須ではないが重要な参考所見とする)」、T細胞ALLは「CD3(細胞表面、細胞質内は問わない)が陽性、かつCD2、CD5、CD7、CD8抗原のうち1つ以上が陽性」を、それぞれの免疫学的診断基準としました。急性骨随性白血病(AML)に関しては、細胞形態学的分類(FAB分類)別に種々の骨髄系抗原の発現パターンを解析し、それぞれの分類に特徴的な抗原発現プロフィールが明らかになりました。異なる細胞系統の抗原を発現する白血病に関しては、4つのパターン:骨髄系抗原を発現するB細胞系ALL、骨髄系抗原を発現するT細胞ALL、リンパ系抗原を発現するAML、およびTrue mixed-lineage leukemiaが認められました。

免疫診断委員会では、小児急性白血病初発時の免疫学的診断のためのマーカー解析パネル、および診断基準を決定いたしました。今後は、微少残存白血病細胞の検出、およびそのフォローアップに必要な抗原に関しては、重要な課題であり、さらに検討する必要があると考えています。


【業績】
1. Ohta H, Iwamoto S, Kiyokawa N, Tsurusawa M, Deguchi T, Takase K, Fujimoto J,Horibe K, Komada Y: Flow cytometric analysis of de novo acute myeloid leukemia in childhood: report from the Japanese Pediatric Leukemia/Lymphoma Study Group. Int J Hematol 93: 135-137, 2011

2.  Iwamoto S, Deguchi T, Ohta H, Kiyokawa N, Tsurusawa M, Yamada T, Takase K, Fujimoto J, Hanada R, Hori H, Horibe K, Komada Y: Flow cytometric analysis of de novo acute lymphoblastic leukemia in childhood: report from the Japanese
Pediatric Leukemia/Lymphoma Study Group. Int J Hematol 94: 185-192, 2011